インバウンド市場とは〜日本の旅行市場において、インバウンドのシェア〜

前回までインバウンド市場の定義、入国者数の推移、世界のインバウンド市場についてなど、現在のインバウンドマーケット状況の把握と今後の展望について、具体的な数字を交えながら概略をお伝えさせていただきました。お伝えさせていただいた情報で最も重要となる事は、インバウンド市場はここ数年で急激に成長している分野であり、今後も成長が期待できる市場であるという事実です。様々なデータに基づいた市場の検証、国を挙げての更なる成長に向けての取り組みの継続など、この分析は正しい方向性を持って認識いただけると考えています。

ただ、市場を理解するにおいて一方的な側面からの事実のみを鵜呑みにして今後のビジネスの方針を決めるのは危険です。インバウンド市場を理解するにあたり、過去からの推移、成長性などのプラス側面のみに注目するのも同じことが言えるでしょう。一般的論として申し上げると、ある突出した現象が起きると、そちらのみに意識が集中し、全体像が見えなくなる事があります。例えば、現在顕著化している東京、大阪、京都などの宿不足を全て外国人観光客の増加にのみ原因を求め、何とか解決しないといけないという議論が展開される記事、報道などを目にする機会が増えました。では、日本国内におけるインバウンド関連宿泊の割合はどの程度なのでしょうか?

観光庁が発表した宿泊旅行統計調査によりますと、2015年の日本国内における総宿泊者(泊数計算)は5億545万人泊となっています。その中で、外国人観光客による宿泊数は6,637万泊となっており、まだ全体13.1%に過ぎません。予想以上に外国人観光客が増えたことが原因となり、宿泊が確保できないなどの声が上がっていますが、全体から見ればまだ1割強のマーケットであるという認識はお持ちいただくべきであると考えています。

同じく、日本の最大旅行会社であるJTBグループの取扱いを見てみると、先日発表された最新1月期の訪日旅行を含む国際旅行の取扱額は36億1900万円であり、同グループの国内旅行総取扱高、672億4500万円と比べるとわずか5.3%に過ぎません。もちろん、宿泊地域によっては、外国人観光客の割合が50%を超える地域、宿泊施設もあるでしょうし、外国人観光客は個人で様々な予約を済ますFIT旅行客が多い事や、中国人団体客などは自国の旅行会社を利用する方が大半だという事実はありますが、まだまだ日本国内におけるインバウンドマーケットは全体の旅行関連市場からすると少数市場なのです。

近頃はインバウンドマーケットの伸びによって、様々な経済問題が全て解決するような論調でのアピールを行っている企業や、成長性のみに焦点を当てて、まるでインバウンド市場を救世主のような扱いで紹介するサイトなども増えてきています。他のサイトではあまり目にしないとは思いますが、我々はあえて市場全体の中でのインバウンドマーケットを意識するべきだとお伝えさせていただきます。そのように市場を捉えることによって、改めて見えてくる事実もあります。

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ここでもう一度インバウンド市場の成長性についてお伝えすると、先ほど述べた外国人宿泊者の占める割合は、7.2%(2013年)→9.5%(2014年)→13.1%(2015年)と確実な伸びを示しています。また、この統計を取り始めた2007年と比べると約3倍となっています。やはり、インバウンド市場は他の業種にはないほどの成長を見せているマーケットである事は間違いありません。一方では客観的、俯瞰的な視点を持ち市場を把握しつつ、ポジティブなイメージを保ちながら行うべきプランを練り、実行し、検証し、改善していくのが今のインバウンド市場への取り組みには必要なのです。

次回は、消費事情、経済効果と言う側面から見たインバウンド市場についてお伝えさせていただきます。

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