インバウンド市場とは ~世界のインバウンド市場と日本マーケット、その可能性~

前回は日本のインバウンド市場の状況を、訪日外国人数の推移と現状、その展望からお伝えさせていただきました。お伝えしたように、日本への海外からの渡航者数から見たこのインバウンド市場は非常にポジティブな動きを見せており、今後の更なる伸びも期待できる有望なマーケットです。

ただ、日本のインバウンド市場のみの情報入手のみに注力すると、大局的な観点を持ってこのインバウンド市場へのアプローチすることが難しくなります。世界の中での日本の位置づけ、強み、課題などを理解することがより深い意味で皆さんのビジネスブランディング構築につながります。今後観光大国を目指す日本は世界の旅行・観光市場の中ではどのような位置づけにあるのでしょうか?ここでもう一度繰り返しますが、インバウンドブランディングの構築において、日本への訪日外国人数が全てではありません。帰国後の彼らの消費行動や、SNS上での情報発信、周りの人間への評判などの影響全てを考えた上でのビジネスを展開する事が不可欠となります。より幅広いインバウンド市場の知識を得て、ターゲットとする訪日外国人の顧客層に最適な提案を続けることが重要なのです。知っておくべき情報を、以下様々なデータをもとに検証していきたいと思います。

少し前のデータとなりますが、世界観光機関(UNWTO)の発表によると2014年に日本を訪れた訪日外国人の総数は1,341万人であり、入国者数としては世界で22番目となります。アジアで見ても、中国(4位、5,562万人)香港(11位、2,777万人)マレーシア(2,744万人)タイ(2,529万人)マカオ(1,457万人)韓国1,420万人)に続く7位となっています。 世界トップはフランスでその総数は8,370万人となり、人口比(約6,600万人)約127%もの入国者を受け入れています。以下、アメリカ(7,476万人)スペイン(6,500万人)と続きます。

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入国手段が空路と海路に制限される事実を考慮しても、客観的に見て世界の中ではもちろん、アジア諸国の中でも外国人観光客の受け入れに対して後塵を拝していると言わざるを得ません。一般的に観光大国と呼ばれる国はその国の人口に対して50%以上の観光客を年間に受け入れています。フランスはもちろん、世界の観光大国と言われるイタリア(4,857万人)は人口比81%、経済的な破たんが懸念されたギリシャ(2,200万人)は実に199%もの外国人が国を訪問しています。観光が主要産業そして基幹産業となっているとなっているこれらの国々と単純に比べることはできませんが、発表されたデータを見る限り、日本を観光大国と呼ぶにはまだまだ抵抗があるのが現状です。

逆に言えば、今後も外国人観光客増の期待ができる日本にはまだまだ上昇の余地があるという事になります。*2016年の統計は6月~7月にならないと発表されませんが、1,973万人と大幅な増加を見せた日本は更なる順位の上昇が期待できます。また、同じく世界観光機関によると現在世界における国際観光客数は11億3,300万人となります。その数は平均3.3%の伸びを見せ、2030年には18億人に達するとされています。観光客全体の底上げが毎年続き、その中でも日本は平均を上回る着実な成長を続けると予測されています。

日本の成長課題として空路、海路に限られる入国手段が挙げられることは前述しました。ヨーロッパなどの観光大国と呼ばれる国は陸路での入国がその大半を占めます。筆者もヨーロッパ在住の経験がありますが、国を跨いでの移動は現地に住む人々にとっては当たり前の事です。長期の休みを取ることが常の国民ですから、キャンピングカーなどで数か国を2~3週間かけて周遊するという旅行スタイルが定着しています。世界第2のインバウンド数を誇るアメリカ合衆国も、カナダ、メキシコと言った隣接国から陸路での多数の入国者を迎えています。一方、世界一の空路、海路での入国者を誇るスペインでは4,738万人(2012年統計)もの観光客を年間に受け入れています。ヨーロッパにおけるLCCの発達といった地域的要因もありますが、日本からの直行便を持たない国が世界一なのです。現在、日本には海外からのアジア諸国を中心としたLCCの参入が相次いでいます。日本の地域的弱点をインフラ手段の発達により、克服する試みと努力が続けられているという事です。

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世界の旅行市場は旅の情報入手手段の多様化、ハンディ化などもあり急速に成熟しています。旅行者が求めるのはスマートフォンからの情報ではなく、自身が感じ、体験でき、感動できる一時的な経験が可能な旅なのです。そういった中で、独自性を持った日本の文化や自然、独特のサービス、価値観を持つ日本市場は客観的に見ても大きな伸び代を持ったマーケットであり、観光大国と呼ばれる日もそう遠くないと確信しています。

*何故、国際観光客者のデータが出揃うのに6か月もかかるのでしょうか?おそらく陸路での入国者を正確に測る手段が非常に困難なのではないでしょうか?全ての道路で国境にイミグレーションがありパスポートコントロールができれば問題ありませんが、実際には不可能でしょう。私が現地に滞在していた頃は国境沿いに住んでいたこともあり、パスポートなしでの入国は通常でした。こうした国は、宿泊者の総数など様々な手段で国際観光客の数の把握に努めています。日本のように島国で出入国数がほぼ100%把握できている国は世界的にも少数部類に入るのではないかと考えています。

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